令和2年度〜令和6年度 共通政策課題分 共同利用・共同研究拠点の強化

人知と AI の融合による新次元ゲノム医療創出の基盤研究

ヒトゲノム解析センターは、医科学研究所附属病院、先端医療研究センターなどの研究者と共に、本事業を推進しています。

事業の目的・目標

科学技術基本計画の中核をなす Society 5.0 における安心で豊かな健康福祉社会の実現のため、従来のヒトゲノム解析に生活習慣や疾病に関与する共生細菌叢やウイルス叢の共生メタゲノム情報を新たな次元として加え、ヒトを共生生物と合わせた 1 つの生物システムと捉えた統合解析を実施する。さらに、その結果を医療者向けに翻訳する人工知能 (AI) を開発することで、疾病の予防・治療に役立てる「新次元ゲノム研究」を推進することで、現在のゲノム医療を凌駕する「新次元ゲノム医療」の基盤を構築する。

事業の取組内容

臨床シークエンスを実施し、全ゲノム・共生メタゲノムおよびその他のオミクス情報と臨床情報を統合分析する情報解析システムを整備し、臨床的に有用な情報を医療者に提供することができる AI を活用したシステムを構築する。また、この AI システムを駆使し、新次元ゲノム研究を推進するネットワーク形成を進め、生命科学系では日本で唯一の国際共同利用・共同研究拠点である東京大学医科学研究所の強みを活かし、また、その拠点機能を強化する。

​参考スライド

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全ゲノム情報を医療へ

全ゲノムシークエンスを行うだけでは医療として価値のある情報は手に入りません。患者さんの全ゲノム情報を医療に活用できるよう「翻訳」しなければなりません。そのためには、今までに出版されている科学論文の情報が必要になります。PubMedは米国 NIH の運営する生命科学分野の論文データベースです。現在 2,900 万報以上の論文が蓄積されています。また、論文数は年々増えています。癌分野だけで昨年は 20 万報の論文が出版されました。今年はもっと出版されます。
もはや一人の人間が読み理解できる量ではないことは明らかです。これらの膨大な文献情報をゲノム医療に活用するには、人の能力を超えた力が必要です。そのため、米国では早々に人工知能の活用が検討されていました。我々、医科学研究所には、附属病院とスーパーコンピュータを有するという強みがあります。その強みを活かし 2013 年に全ゲノム情報に基づく臨床シークエンスの体制整備をスタートさせました。その中で世界的にも早期にゲノム解釈のための AI を導入した研究を進めてきました。

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健康を左右するものが

私たちの中にいる!

ヒトには約 2 万種類の遺伝子があり、個々人で多様性があることが知られています。同様に私たちに共生する細菌叢、ウイルス叢も個々人で異なり、最初に申し上げましたように、約 2,000 万種類の遺伝子を有しています。これらは環境・ストレスや加齢によっても日々変化します。数の上では遙かにヒト遺伝子を凌ぐものです。
この共生細菌叢・ウイルス叢が私たちの健康、疾病、精神状態にまで大きく影響しています。もはや、ヒトゲノムを調べるだけでは私たちの健康や病気は理解できません。共生細菌叢・ウイルス叢は「第 2 の自分」と呼ばれ、私たちの健康状態を規定するものなのです。

 

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Society 5.0 のゲノム医療

左半分は現在のゲノム医療の日本の状況、世界情勢です。本事業では、これを飛び越えた研究を展開します。右半分が本事業です。全ゲノム情報にヒトに共生する細菌叢、ウイルス叢の情報を新たな次元として加えた新次元ゲノム研究を推進します。また、そこから得られる情報を医療にとって価値ある情報に翻訳するための人工知能を新たに構築し、新次元ゲノム医療の創出を目指します。
ヒトに共生する細菌叢やウイルス叢は、生活習慣や環境に応じて日々変化します。その情報をヒトゲノムと合わせて AI によりシームレスに患者の治療にフィードバックする基盤を構築します。新次元ゲノム情報というサイバー空間と医療空間であるフィジカル空間をAIによって融合することで、Society 5.0 の一人ひとりの実情にあわせた精密医療が実現されます。