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全ゲノム解析等の網羅的ゲノム解析による消化器神経内分泌がんの病態解明

更新日:2021年12月15日

世界に先駆けて難敵ながんの本態を解き明し、薬剤開発の推進に期待


大阪大学大学院医学系研究科/国立がん研究センター研究所の谷内田真一教授、東京大学医科学研究所ヒトゲノム解析センターゲノム医科学分野の柴田龍弘教授らの研究グループは、日米欧のサンプルを用いた全ゲノム解析等の最先端の解析を行い、難治がんである消化器神経内分泌がん (NEC) を対象に、その発がんメカニズムを解明しました。


NEC は、増殖速度が速く悪性度の極めて高いがんで、希少かつ難治がんです。さらに、診断時には手術適応となることが極めて少ないため、研究試料の入手が難しく、これまで、そのゲノム異常はほとんど未解明でした。神経内分泌がんは臓器横断的に発生しますが、本研究では特に発症頻度の高い消化器の NEC を研究対象としました。


また、2019 年の消化器の WHO 分類では、NEC と神経内分泌腫瘍 (NeuroEndocrine Tumor: NET (ネット)) の病理像により分類されましたが、今回の網羅的ゲノム解析により、発症メカニズムに伴う遺伝子異常に差異があることを実証しました。NEC の大きな特徴として、神経内分泌系への分化をつかさどる転写因子である SOX2 (山中因子の一つ) や ASCL1 が高発現していました。


さらに、NEC におけるこれらの転写因子の過剰発現は、各遺伝子のプロモーター領域のメチル化に起因していることを明らかにしました。一般的にはプロモーター領域の脱メチル化により遺伝子の発現が増加することが知られていますが、それとは逆の機構であることを解明しました。


膵臓由来の NEC と胃や大腸などの非膵臓消化器由来の NEC の病理組織像は類似していますが、今回の解析からゲノム異常には類似している点と異なる点があることも明らかとなりました。加えて新たに、膵臓由来の NEC はそのゲノム異常の違いから「Ductal-type (腺管型)」と「Acinar-type (腺房型)」に分類できることを発見しました。これは、膵臓の NEC の起源となる細胞には複数のものが存在する可能性を示唆しています。さらに、消化管 NEC の発がん要因のひとつに、ウイルス感染が関係していることも明らかとなりました (メルケル細胞ポリオーマウイルスやヒトパピローマウイルス)。


今後、今回明らかとなった消化器の NEC の発症メカニズムを基に、開発中の分子標的薬のドラッグ・リポジショニングや新規創薬が推進されることが期待されます。


掲載誌: Cancer Discovery (オンライン版) Comprehensive Genomic Profiling of Neuroendocrine Carcinomas of the Gastrointestinal System.


詳しくは東大医科研プレスリリースをご覧ください。



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